ねじの話
最近、車上荒らしで狙われる約4割がカーナビだそうだ。盗品を売りさばく裏社会で換金しやすいため、盗難は年間3万5千台という。純正品はもとより市販品でもダッシュボードにきっちり取り付けられたカーナビを盗むのもかなり大変だろうと思うのは素人の考え。プロの手にかかれば数秒で取り外せてしまうものらしい。
カーナビは結構高額なうえ、盗難後も登録されている自宅や勤務先、友人宅などの個人情報が悪用されかねない。そこで最近は取り付けを市販の工具では歯が立たない特殊な「防犯ネジ」に取り替えるよう業界団体が勧めている。
いま私たちの最も身近に存在する「物」は何か? それは「ネジ」ではなかろうか。自分の1m内に存在するネジを数えたら、10個や20個で収まるまい。メガネをかけていれば、それだけですでに2個だし。人類が「ネジ」を生活に取り入れたのが紀元前2000年。アルキメデスの揚水ポンプの原理が最初と言われる。1770年代の産業革命によって一気に広まったと言われる。日本への伝来は、種子島銃の銃座に使われていたネジが最初との説がある。
そんなネジの、日本での2008年の生産量が321万トン(前年比3.8%減)、8980億円(0.7%減)。景気後退でも落ち込みが小幅にとどまっているのは、現代社会においてネジはすでに、いかなる状況下でも欠くべからざる存在になっているからだろうか。
そのように極めて重要なのに、その割には存在感がまるで地味なネジ。
そのネジを一躍「人気者」に仕立てた人がいる。東京・虎ノ門の小さな老舗ネジ専門店・三和鋲螺の三代目・石井健友さんだ。07年秋にふと思い立ち、ネジの格好の着ぐるみを着たちいさなキューピー人形「ねじキューピー」を遊び心で作って店に置いてみると、「可愛い」とすぐ売れた。そこでその後も少しずつ作りためながら売り始めると、そのたびにあっという間に売り切れ、昨年は1万個うれたという。予約もネット販売もせず、店頭でしか買えない超地域限定商品なのだ。
「うちのような会社でもこれくらいできるんだから、大きな会社が本気になれば、きっとすごいことができるんでしょうね」と石井さん。6月1日は「ねじの日」でした。
弊社もねじ企業として「ねじの日」の啓発協賛に勤めています。
―信用情報「レーダ」(6月2日)より