変化を求める転換点
内閣府が先に発表した1~3月期のGDP(国内総生産、季節調整値)改定値によると、物価の変動影響を除いた実質GDPは前期(昨年10~12月期)比1.6%増、年率換算の前期比は6.7%増と、いずれも速報値を上方修正する結果となった。
アベノミスク効果による緩やかな景気回復や、消費増税に伴う駆け込み需要が内需を引き上げた格好である。
現実に工作機械受注実績も、日本工作機械工業会が発表した5月の速報値で、前年同月比24.1%増の1204億4600万円と、8か月連続で増加している。一部では「新ものづくり補助金」絡みの受注が出始めているとの指摘もあるが、同補助金効果の“本番”は今月からとの見方が大勢を占め、1400億円もの予算措置を行った政府による経済対策の目玉のひとつだけに、各種製造業への更なる波及効果が期待されている。
経済紙のみならず一般紙においてもロボットや3Dプリンター、IT投資といった活字を見ない日は無いと言っても過言ではないほどの“過熱”ぶりである。人が近づけない原発などの収束作業から、逆に人々の生活の利便性・豊かさを追求しようとするスマートコミュニティー構想に至るまで、テーマ―は様々だ。
またオリンピックを控えた首都圏では“一極集中”を象徴するように不動産価格の上昇とともに、関連建設需要も活況が伝えられている。自動車関連でも、大手メーカーによる“国内生産300万台生産死守”宣言や、九州に次ぐ第3の生産拠点として復興を見据えた東北地方への投資拡大など、一層のQCDが求められつつも関係者の表情は明るい。
ここまで見ていくと、目先の景況感は底固いいよう映るが案外、中小製造業の見方はまだまだ懐疑的である。直近の業界関係者による会合の席でも、耳にするのは消費増税による“反動減”への検証が十分になされてないことや、材料動向の先行きへの懸念だ。
これを裏付けるように前者では、公正取引委員会による消費税転嫁対策特別措置法に基づく処分として2例目の改善勧告と社名公表が行われた。また後者では、ニッケル価格の大幅上昇に伴いステンレス鋼が4月納入分から約10%ベース価格改定(値上げ)が実施されている。製鉄原料の鉄鉱石価格こそ、年間契約から四半期ごとの値決め方式移行した10年4月以降最安値となり、市況下押し懸念が広がっているが・・・。
今後は、先行きへの懸念もさることながら、常に変化への対応が求められる状況下では、企業の質的向上を図る意味でも一層の“転換点”に差しかかっている。