丸セパ 即納 共栄製作所株式会社のホーム > 共栄ニュース > 共栄ニュース 2014年11月号 -第289号-

投   書

徳川家康を祀る静岡市「久能山東照宮」に、「家康公の時計」と呼ばれる西洋時計が神宝として保管されている。1609(慶長14)年7月、スペン船が千葉県沖で座礁、地元の人々によって乗組員373人のうち317人が救助された。家康は、彼らの滞在に便宜を図っただけでなく、帰国に必要な帆船まで提供した。おかげで彼らは無事帰国することができたお礼として、スペン国王フェリペ3世から贈られたのがこの時計だった。

歴史的にも価値の高いこの時計には、さらにエピソードがある。1995(昭和30)年6月10日の「時の記念日」に、「家康公の時計」の時報音を聞かせるイベントが行われた。その時貴重なこの時計の存在を知り、「これは金になる」と踏んだ不届き者が、5カ月後の11月、時計を盗み出したのだ。

 年が明けても解決しなかった事件が、しかし約70日後の2月、急展開した。一人の小学生が地元新聞社に投書を寄せたのがきっかけになった。「大切な時計ですから返して下さい。捕まったら僕も一緒に謝ってあげるから」――幼気な子供の訴えに心動かされたのだろう。犯人が新聞社にこっそり時計を返しにきた。犯人は結局逮捕されたが、犯人にも血の通ったところがあったと知り、少しほっとする。

 さて、投書をきっかけに波紋を広げているのは「盲導犬事件」である。8月1日付朝日新聞の「声」欄に寄せられた投書によると、さいたま市で全盲の男性が通勤途中、パートナーの盲導犬が何者かに傷つけられたという。事件が起きたのが7月28日午前。男性がいつも通り出勤すると、彼のパートナー犬、ラブラドールレトリバーの「オスカー」が着ていたシャツに血が付いていることに、会社の同僚が気付いた。どうやら先端が尖った千枚通し様のもので腰の辺りを数カ所、刺されたらしい。

 「オスカー」は手当てを受け現在は治癒していると知り安堵すると同時に、怒りが猛烈にこみあげてくる。なんと卑劣なことをするのか。盲導犬は、パートナーに危険を伝える場合を除いては、無駄に声を上げたり反撃をしないよう訓練されている。「オスカー」も、主人を動揺させないように、刺されても必死で痛みを堪えていたのだろう。

 オーナーによれば、事件後も「オスカー」は人を怖がることなく、顔をまっすぐ上げ、自分に寄り添いながら、導いてくれているという。犯人に問いたい。「そんな『オスカー』の健気な目を、あなたはまともに見ることができるのか」と。

信用情報(レダー)より