アウトレットの賑わい
人口1万2500人の滋賀県蒲生郡竜生町。自動車メーカーの滋賀工場があり4000人の従業員を抱えるが、著名な史跡・名刹があるわけでなく、山林と田園の広がる静かな町―――というこの町に対する認識は、いまや過去のものだ。
2010年7月、町内に、著名ブランド200余店が軒を並べるアウトレットモールがオープンした。以来、多くの通行者にとってそれまで単なる通過点に過ぎなかった名神高速・竜王ICは、渋滞の名所として認知されるようになった。モール運営会社は開業当初、年間来場者を400万人と見込んでいたが、4年後の現在、当初の想定を上回るペースを維持し続けていると聞く。そのモールに去る休日、出掛けた。
午前11時、モール隣接の駐車場はすでに満杯。誘導された駐車場は500m以上も離れており、そこから人々が列をなしメーン施設へ歩いて向かう様子は、まるで紅葉の京都・嵐山に押し寄せた観光客の人波のようだ。駐車場に並ぶ車のナンバーは、滋賀県はもとより京都、大阪、岐阜、福井、石川、そして愛知と県外が目立つ。そう、アウトレットモールはすでに「商業施設」でなく「観光スポット」なのだ。
百貨店へ出掛け、しかし結局ウインドショッピングのまま帰ることはあっても、郊外
のアウトレットモールへ、最初からまったく買う気もなく出掛ける者は少ない。しかし行けば、シーズン物でも「30%OFF」「50%OFF」と魅力的なPOPが、「アウトレット」だからこそと思わせる“お得感”を漂わせながら購買意欲を刺激する。
しかし―――。アウトレットモールの店頭に並ぶ商品が、本当にお買い得なのかと言うと、話は別だ。とあるお気に入りブランド店を覗くと、都市部の通常店頭では見かけない商品が置かれている事に気付いた。デザインこそ似ているが、素材や付属品、縫製を丁寧に見ると、「うん?」。どうやら、厳しい検品時にハネられた「少々難あり」のB品ではなく、最初からアウトレット用に作られた「兼価版」らしい。名の知れたブランド商品にも、そう思える商品があったことを残念に思う。
有力ブランドも、都心店舗では苦戦が続いている。同じ消費者が同じブランドの同じような商品を買うはずはなく、郊外のアウトレットモールで兼価版や値引き品が売れれば売れるほど、正規品を扱う都心店が苦戦するのは当然の帰着だ。
ブランド品らしいセンスと技術と誇りを持って物づくりして欲しいと消費者は思う。
信用情報(レダー)より