生理学者の健康講座
「ノーベル医学・生理学賞」と言うように、生理学は人類の発展と共に研究が深められてきた非常に歴史ある研究領域です。医学が、病気の人を回復させることに重きを置いた研究分野なのに対して、生理学は、健康な人間のメカニズムや、我々の体や脳がどうやってできているのかという、人間の構造と機能を調べる、より学問的な分野です、と語るのは有田秀穂脳生理学者である。すなわち、生命現象の「トラブル解決」に重きが置かれているのが「医学」で、生命現象そのものの解明を目指しているのが「生理学」なのである。 それでも分かりづらければ「車」に例えてみればいい。車の「修理法」を研究している「医学」に対して、車そのもののシステムを分析、理解しようとするのが「生理学」ということになる。車は何でできていて、なぜ走るのか。エンジンやブレーキはどういうシステムによって作動するのか。そうしたことを理解していなければ、自分で車をメンテナンスすることは不可能である。すなわち自分でメンテナンスできれば、故障を防ぎ長く乗り続ける事ができる。つまり、人間で言えば、長く「健康」を保てるということだ。
しかし、「車」は人間の“創造物“ゆえ、そのシステムは100%判明している。一方、人間を創り出したのは人間ではない。そこには常に「未解明」の部分が残る。
例えば、風邪をひいて高熱が出た時は汗をたくさんかいたほうが良い―――「○」か「×」か。答えは「×」だ。二十数年前まで、部活動の練習中に「水を飲むな」と指導していたが、「運動を効率よく行うためには無理にでも水を飲ませた方が良い」ということは、アメリカの研究で早くから証明されていた。にもかかわらず、間違った指導が広まったのは、学校の先生が運動生理学の適切な教育を受けていなかったためだろう。昔はトレーニングの一環として“うさぎ跳び”も良く行われたが、最近はめっきり見かけなくなった。うさぎ跳びは、股関節や膝関節を深く曲げたまま、不自然な動作で跳び上がるため、膝関節や靱帯を傷める恐れがあるため最近では行われなくなった。
TVのCMなどの健康食品では、グルコサミンやコンドロイチンは膝や関節の痛みに効くと言われているが、口から摂取しても体内で分解されるので効かない。また、コラーゲンも口から摂取しても体内で分解されてしまうので効果はない。健康食品には誤った「言説」があるので要注意である。