丸セパ 即納 共栄製作所株式会社のホーム > 共栄ニュース > 共栄ニュース 2015年4月号 -第294号-

《中国版「三本の矢」は失敗する》 宮崎正弘の「北風抄」コラムより

・・(中略)過去二十年近く、アフガニスタンとイラクでのテロ戦争で激しく消耗した米国は、シリアの空爆を実行できず、またテロリスト「イスラム国」に対しても空爆を行っただけで地上部隊の派遣は考えていない。

その上、オバマ大統領は「米国はもはや世界の警察官ではない」と声明した。 この米国の衰退にすばやく反応し迅速に動き出したのが中国である。南シナ海の海底資源を確保し、シーレーンを中国軍支配下に収めようと、スプラトリー諸島、パラセル諸島の多くの岩礁にセメントを流し込み、永興島には滑走路、その付近に軍事施設を矢継ぎばやに建てた。 これを秩序を乱すものとして、米国は航行の自由、海洋のルールを破壊する無謀な行為だとして、中国を名指しで非難こそしたが軍事的な対抗措置をすることはしなかった。尖閣諸島にしても、昨年四月に来日したオバマ大統領は「日米安保条約の適用範囲」と言明したものの「断固守る」というものではなかった。だから中国は頻繁に尖閣諸島の領海を侵犯し、小笠原諸島近海から赤サンゴを盗んでいくのだ。

こうみてくると米国のアジアシフトはリップサービスに過ぎず、実際を伴っていない。

アジア各国に失望の色が拡がった。つまり米国は現状維持を呼びかけているにすぎず、これを正確に読んだ中国が次の行動に出てくるというわけだ。

中国版「三本の矢」とはこうである。第一にアセアン諸国に「大メコン構想」(南北縦貫鉄道と東西ハイウエー)を持ち掛け、「アジアインフラ投資銀行」が融資する。これは厳しく中国に抗議するフィリピンとベトナムの口を封じる効果も狙える。

第二に巨額の投資話をぶちあげることでインド主導の「南アジア地域協力連合」をゆらす。資本金1000億ドルという「BRICS」銀行を設立して賄うとした。

第三に陸と海のシルクロード構想(総額二兆六千億円)で中国が資金を賄うというビックプラン(たぶん大風呂敷)で全アジアの関心を惹きつけ、南シナ海の軍事冒険をそらそうとした。 だが台湾で中国寄りの国民党が惨敗し、香港は若者らの反乱(雨傘革命)、そして一月上旬のスリランカ大統領選挙で親中派のラジャパクサが落選、民衆は中国にノ―と言った。インドネシアもタイも従来のように中国を強くあてにしなくなった。 中国の「三本の矢」は、どう見ても失敗に帰しつつあるようだ。このタイミング、日本の大胆な外交の好機と言えるのではないか。     (平成27年1月26日)