円安、株高に悲喜こもごも
今年、2月18日から始まった今年の中国の旧正月(春節=24日まで)に伴う中国人観光客による”爆買い“が連日報道されている。日本製品の品質の良さに加え、円安もあって中国国内の半額もしくは3分の1の価格で購入できるらしく、主要都市の百貨店・量販店はその対応に追われているようだ。
こうした旺盛な購買意欲に、日本のバブル全盛期におけるイメージを重ね合わせた人も多いのではないだろうか。1980年代後半「東京・山手線内側の土地価格で米国全土が買える」と算出されたのと同様、中国では4年前「北京を売れば米国が買える?」と不動産バブルに警鐘を鳴らす記事が既に掲載されている。
アベノミクス効果によるものか、このところ円安・株高の勢いは止まらない。昨年1年間で、為替レートは1ドル=100円から120円へ20%円安になり、株価2月19日現在、日経平均株価が14年9カ月ぶりに1万8300円台をつける高値となった。
しかし昨年末時点で、円安は必ずしも中小企業業績に反映されていない。ある調査機関がまとめた円安に伴う企業への影響調査でも、中小企業では円安で「(業績が)悪化した」と回答したのは3割を超え「改善した」の2割未満を上回っている。大企業では「改善した」が4割で「悪化した」の2割より高く、中小企業の方が大企業に比べ円安の恩恵を受けていない結果となっている。
調査対象業種・業態にもよるが、大企業の場合は円高時の海外進出で現地生産・調達から現地消費の傾向が定着し、円安でも輸出の伸びる余地が少ないことが推察される。これに対し中小企業は一部を除き、海外に生産・販売拠点を持たないところも多く、当面は原油安といった“追い風”もあり、厳しいながらも内需で凌ぎ機会を見て…との見解だろう。
元々この円安・株高を招来したのは“黒田マジック”。昨年10月31日、日銀の黒田総裁が電撃的に打ち出した追加金融緩和には、消費税率引き上げ判断を含め様々な思惑があったとされるが、ともあれ為替は月次平均で1ドル=108円(10月)から116円(11月)へ、株価は1万6400円台(10月)から1万7400円台(11月)へと、一連の流れを決定づけた形だ。
一昨年末に、昨年から今に至る経済状況を予想し得たエコノミストは誰一人いなかった。問題は現下の状況がいつまで続くかだが、単純に上がったものは現状維持か、下がるしかないという道理にはならないのが経済である。多少の“振れ幅”はあっても、2017年4月に実地予定の消費税率10%引き上げまでは持ち堪えてほしいものである。
2015.03「時評」