韓国経済を苦しめる家計負債
家計負債 韓国経済を苦しめている原因は、輸出不振や若年層を中心とする高い失業率、そして日本以上に進む人口構造の高齢化現象などだ。特に問題となっているのが「家計負債」。その規模がここ数年急速に増えていることによる。家計負債は、銀行など金融機関からの借入金やクレジットカードによるローンなどの合計金額。住宅ローンなども入る。
韓国の今年度(2016年1月~12月)国家予算は、概ね386兆ウォン。2015年12月、家計負債の総額はその3倍をはるかに超える1207兆ウォンになり、前年末の1085兆ウォン比11.2%増、121兆ウォンの増加となった。韓国の総人口は推定で5061万人余り、国民1人当り負債額は約2400万ウォンに及ぶ(1ウォン=0.09円)。韓国政府も韓国人も危機意識は乏しい。
家計負債の大半を占める住宅ローン 家計負債の内訳は、住宅ローンが608兆8000億ウォン。家計負債の約半分を住宅ローンが占めている。これは「集団融資」と呼ばれるローン増加が原因だ。「集団融資」は住宅施工会社がアパート(マンション)を1棟建築して販売(分譲)し、販売にあたって施工会社が銀行と交渉のうえ、購入者1人ずつに施工会社が保証する形で低利のローンを組ませるやり方だ。銀行はこの場合購入者(契約者)に対する個別審査をすることなく、融資を実施する。当該物件は施工会社が担保を設定。ところが販売を急ぐあまり、施工会社の保証に際する審査がかなり甘くなるのが一般的で、契約者が途中でローンを払えなくなり不良債権化するケースは少なくない。
韓国政府が景気浮揚策の一環としてこのような手立てを講じる限り、「集団融資」を利用した住宅担保ローンは増え続けるだろう。
経済回復の足を引っ張る要因に 国民1人当たりの負債が2400万ウォンに及ぶ、と前述したが全国2人以上の世帯の月平均所得は、昨年437万3100ウォンで対前年比1.6%の増加にしかなっておらず、家計負債の増加率11.2%には、はるかに及ばない。返済は容易ではない。
借金返済不能の多重債務者もこの数年増え続けており、いわゆるサラ金業者やヤミ金融業者を頼るケースも増えている。こうした第三、第四金融圏からの借り入れの際の金利は40%の上限(法定金利)、あるいはそれ以上で借りるケースが多い。韓国の家計負債状況は悪化するばかりだ。経済回復の足を引っ張るのは間違いない。