プライムフライデー構想
8月、産経新聞が「個人消費喚起のため政府・経済界が『プライムフライデー』構想」と報じた。
政府は平成32年度をめどにGDP(国民総生産)を600兆円に拡大する目標を立てている。そのためには、現在300兆円に止まっている個人消費を360兆円に引き上げる必要があるというのが経団連の試算。そこで、毎月末の金曜日は終業時刻を午後3時に切り上げ、夕方に買い物や食事をしたり、これまでは土曜日の朝から出掛けていた旅行の出発を前日からに早めることなどで、個人消費を喚起しようというのが狙いだ。
「なるほど名案!」という反応はしかし、関係者の期待に反して薄い。ネットアンケートの意見では「効果がある」の28%に対して「効果なし」が64%と倍以上。「月次の締め作業が近い月末金曜日の3時終業は無理。可能なのは公務員ぐらいだ」「仕事量が変わらなければ、処理しきれなかった仕事は別の日に回され、結局サービス残業が増えるだけだ」「勤労者の3割を占めるバイトやパートは大半が時給。3時上がりは減収になり、個人消費はむしろ減少する」など冷ややかな反応が数多く載る。
旅行会社エクスペディア・ジャパンの調査によると、日本では正社員の場合、年20日の有給休暇を付与されているのに対し、その収得は平均12日。つまり60%という日本の有給消化率は、世界26カ国中、韓国(40%)に次いで低い。
にもかかわらず「休みをもっとほしい」と答える日本人は39%止まりで、意外に少ない。なぜか。日本は週休2日の定着や祝祭日、年末年始、夏季休暇など年次休暇が比較的充実しているため、経済開発協力機構(OECD)調査によると年間労働時間は平均1746時間(2012年)と、世界平均の1765時間をわずかにせよ下回っている。つまり日本人は、自身が思っているほど「働き詰め」の状況にないからではあるまいか。
15日発表された本年4―6月期のGDP速報で、個人消費は前期比0.2%増にとどまった。消費が伸び悩んでいる理由は明確だ。非正規社員の増加、賃金の伸び悩み、若者や子育て世代が抱く将来への不安等々、それらの何一つとして改善・是正の兆しがみられないのに、気持ちが消費に動くはずがない。「自由な時間を増やせば消費が増えるだろう」とは、古き良き昭和の発想ではないのか。「思いつきで消費が上向くなら苦労はしない」と断じていた某ネットジャーナリズムの指摘に、いたく同感である。 ≪レーダーより≫