建設業の人材確保に向けて
厚生労働省と国土交通省はこのほど、建設業の人材確保と育成に多角的に取り組むため、平成29年度予算の概算要求を行い、併せて概算要求の概要(①人材確保、②人材育成、③魅力ある職場づくり)を公表した。現在、建設業では現場従事者の高齢化が進み、実に従事者のうち3分の1が55歳以上となっており、対策が急がれるためだ。
◎人材確保 建設業への入職を促すため建設業の魅力の向上や建設労働者確保育成助成金の支援、社会保険等未加入対策の推進などを掲げている。
近年の建設業従事者の就職動向を見ていると、目先の短期的な好況予測による人材流入といった動きは抑制される傾向にあることが見て取れる。良好な住宅着工件数の推移や東京オリンピック開催を前にしてもなお、十分な人材が確保されているとは言えない。近年の若者層は従来に比べ長期的な安定性に重きを置く傾向にあり、かつてのような建設業現場における景気の波に応じた労働力の高い流動性というものは、少なくとも日本人労働者に対してはこれからの時代は通用しなくなるだろう。こうした若者層に訴えるには、社会保険等の整備は重要だ。
◎人材育成 若年技能労働者を育成するための環境整備として、中小建設事業主等への支援や技能者のキャリアパスの見える化などを掲げている。
もっとも人材育成のノウハウ自体は既に個々の企業が十分に持っているものだ。問題なのは、その指導する立場の熟練技能者がこれから退職した後である。既に3分の1が55歳以上に達しているという現実を鑑みると、若者層へのノウハウを伝え続けられる仕組みを今のうちに企業内に担保せねばならない。
◎魅力ある職場づくり ここでは技能労働者の処遇を改善し安心して働けるための環境整備を行うとし、雇用管理責任者等に対する研修等の実施や、建設業女性定着モデル推進を掲げている。
前者は労働環境の改善に関わる研修・指導であるが、若年層が苛酷な現場を忌諱する傾向があることを考えると、今や職場環境の改善に向けた取組みは避けては通れないものとなっている。後者は、現場の人材不足を女性の進出で補おうとするものだが、推進には恐らく多くの困難と時間が伴うことが予想される。育児への配慮に加え、体力面で可能な作業と難しい作業の区別など配慮がなされる必要が出てくるからだ。迎え入れるには現場の余裕、労働環境の成熟が必要条件である。