丸セパ 即納 共栄製作所株式会社のホーム > 共栄ニュース > 共栄ニュース 2017年4月号 -第318号-

不器用は才能

「……不器用ですから」。そのひと言を聞いただけで、“あの人”の顔を思い浮かべる。俳優・故高倉健さん。20年前、珍しくトーク番組に出演した健さんは、司会から「コントをやってみたいと思ったことはありませんか?」と訊かれて、いつもの、はにかむような笑みを浮かべながら答えた。「コントですか?……不器用ですから」

 健さんをわざわざ引き合いに出すような話ではないが、「不器用だからこそ、かえって良い」ということが、料理人の世界にもあるのだろうか。いわゆる三ツ星クラスのシェフが異口同音にそう話しているところをみると、単なる偶然ではなさそうだ。

 パリ「ローベルジュ・デュ・キャンズ」オーナーシェフ守江慶智さん「料理は、五感を使って作っていると、自分のすべてが出ます。だから不器用なほうが自分らしい料理を作れるんじゃないでしょうか。要領よく、作業的にやっていると、料理に面白みがなく、作り手の個性が出なくて、きっとお客さまに飽きられてしまいます」

 和歌山「オテル・ド・ヨシノ」料理長・手島純也さん「料理学校に通うお金がなく、地元のフランス料理店に片っ端から電話してやっと入れてもらった店で痛感したのは、自分がいかに不器用かということ。一人前になるには他人より圧倒的な努力が必要ということ。でも、それで自分の不器用を自覚できたし、だから人の何倍も努力することで、自分の夢や願いを、少しずつ叶えられたんです」

 銀座・会席料理「阿伽免(おかめ)」元料理長で新宿調理師専門学校長・上神田梅雄さん「私はもともと手先が器用ではなく、劣等感の塊だったから、匠を目指す仕事ができるかどうか不安だった。しかし、いま振り返って思うと、他人より不器用だという自覚があったからこそ、少しでも他人より優れるための努力を続けられたのだと思う」

 「器用貧乏」という言葉がある。「なまじ器用なため、あれこれ手を出し、どれもが中途半端に終わってしまうこと」だ。

 健康食品・化粧品販売「銀座まるかん」創業者で日本有数の億万長者・斎藤一人氏も語る。「生まれつき器用な人って、だからそれ以上、工夫という努力をしない。不器用な人は、一生懸命練習し、知恵を使って工夫し、努力し続ける。そうやってみると、不器用さは『才能』の一つですよ」

 「不器用さ」を才能に変える努力の大切さ―――料理人の世界に限るまい。

信用情報レーダーより