丸セパ 即納 共栄製作所株式会社のホーム > 共栄ニュース > 共栄ニュース 2019年9月号 -第348号-

風 雲・永 田 町

国家安全保障局の谷内正太郎局長(富山市出身)が退任の方向である。同局は2014年1月に発足した。首相と外相、防衛相、官房長官らで構成する、

外交・安保政策の司令塔、国家安全保障会議(NSC)の事務局である。谷内氏は初代局長に就任し、5年半にわたって安倍晋三内閣の外交を支えてきた。

 ベテラン記者が言った。「75歳の年齢もあり、退任は本人の意向だという。しかし、首相側近である今井尚哉政務秘書官らの『経産主導型外交』に嫌気をさした側面がありそうだ」

 今井氏と谷内氏の違いは。「特に、日中問題で意見が違った。谷内氏は南シナ海への中国の海洋進出に妥協しない方針だった。今井氏はそれを緩めて、自民党の二階俊博幹事長の訪中に便乗して、安倍首相の親書を持参した。安倍政権は、米中貿易戦争にも何も言わない。香港の抗議デモにも何も言わない」

谷内氏と近い政府高官が説明した。「谷内氏は、かつて佐藤栄作首相のブレーンで、沖縄返還の密使を務めた若泉敬氏の書生だったことがある。国土であり、谷内氏の心の中にあるのは『社稷(しゃしょく)の臣』(=国家の危急存亡のとき、その危難を一身に引き受けて、事に当たる臣)という気分だ。今井氏との間に、食い違いが確かにある」

 具体的には。「2つある。まず米国との付き合い方。米国は本気で中国と貿易戦争をしている。世界のトップを目指す覇権争いだ。そこに、谷内氏は『妥協はない』と思っている。今井氏は『妥協はある』と見ている。」

 もう1つは。「中国との向き合いに違いとズレがある。南シナ海の問題も、谷内氏はいま片付くとは思っていない。しかし、何かあったら一度はそこに石を置く。つまり囲碁でいう『劫争い』だ。今井氏は石を置くことの意味がわからないのではないか。つまり、外交戦略が分からない」

次の指摘も。「谷内氏は、中国共産党が崩れないようにしなければ、と思っている。中国が潰れると、世界が大混乱になるからだ。今井氏は、中国共産党が崩壊してもいい、中国が弱って日本に近づいてきたから利用できる、と思っている。谷内氏は、弱みにつけ込むと中国の長い恨みを買う、とみている」

 かつて、駐タイ大使で外交評論家の岡崎久彦氏が「谷内君がいる限り、日本の外交は大丈夫だ」と言った。日本外交が心配である。    

-鈴木棟一の谷内国家安全保障局の退任についてー