成長率減速が鮮明化する中国経済
ここへ来て中国経済の減速感が鮮明化している。10月18日に中国国家統計局が発表した7~9月期の実質GDP成長率は、前年同期比で6.0%だった。現在の中国経済を一言で表せば、“成長の限界”を迎えているといえそうだ。これまでのインフラ開発などの投資にけん引された、経済成長のモデルが行き詰まっている。リーマン・ショック後、中国政府は積極的な景気対策として主にインフラ投資を積み重ねた。それは一時の景気回復を支えたが、当時、あまりに巨額な固定資産投資が行われたこともあり、経済全体の効率を上げられる投資案件がほとんど見当たらなくなってしまった。それは1990年代前半のわが国の経済状況と似ている。
一方、公共投資などに伴う多額の債務が積み上がっている。習近平主席が“灰色のサイ”と呼ぶ債務問題もかなり深刻化している。今後、不動産バブルの崩壊などにより、債務問題が一段と深刻化する恐れもある。中国経済の先行きは楽観できない。
中国経済の成長率が鈍化した背景には、経済活動の効率を高められる投資案件が見当たらなくなっていることがある。この状況は、従来の経済モデルの“成長に限界”といえる。
また、輸出面も厳しい。“世界の工場”の地位は既にほかのアジア諸国に移っている。
2014年以来、中国が安価かつ豊富な労働力を強みに世界経済の輸出基地としての役割を発揮できなくなっている。それに加えて、米中の貿易摩擦が激化し、世界のサプライチェーンを寸断・混乱させている。コスト低減などを目指し、各国企業は中国からインドやベトナムなどのアジア新興国へ生産拠点を移している。
当面、中国経済がさらに減速する可能性は軽視できない。中国政府は景気対策をさらに強化するだろうが、それがどの程度の景気浮揚効果をもたらすかは不透明だ。債務への持続性への懸念が高まるなか、米中貿易摩擦の影響も軽視できない。
また、消費マインドが冷え込んで、中国の新車販売台数は9月まで15カ月連続でマイナスになった。中国の需要はかなり鈍化してしまっており、短期間で回復する展開は見込みづらい。それが中国経済の自律的な回復につながるとは言いづらい部分がある。債務問題解消のメドが立っていないなか、中国経済の先行きは楽観できない。
経済評論家■真壁 昭夫