丸セパ 即納 共栄製作所株式会社のホーム > 共栄ニュース > 共栄ニュース 2020年10月号 -第361号-

あ ん ば い

 百薬の長、憂いの玉箒(たまははき)、天の美禄、詩を釣る針・・・。これらは酒の効能を説き、肯定するのに用いられることわざで、呑兵衛(のんべえ)であれば一度ならずとも口に出し、「やっぱりお酒はいいものだ」と、自分を納得させたことがあるのではないか。   

TOKIOの元メンバー山口達也氏が酒気帯び運転の現行犯で逮捕された。2年前に起こした事件を猛省し、酒を断つ生活をしているとも報じられていた。復帰を願っていた関係者、ファンも少なくなかったが、そうした想いを受け止め、再起に向けて頑張っていたわけではなかったようだ。   

酒は、“百薬の長”になるが、反面“百毒の長”にもなり、酒呑みなら酒にまつわる失敗談の一つや二つはあるだろう。だが、怖いのは酒ではなく「依存症」だ。「息抜き」とは一線を画す「依存症」は、自分の力でコントロール出来ないため、医学的な疾患として治療が必要なのである。一時は治ったように見えても、完治には時間がかかると言われている。アルコール、ニコチン、薬物、ギャンブルなど古くから聞かれるもののほか、最近ではネット、ゲームなど新しい依存症ジャンルも生まれている。

 これらモノ・コトに対しての依存以外にも、恋愛相手や家族、職場の上司・部下など、人に対する「共依存」という概念もある。もともとはアルコール依存症の夫を支える妻の行動から名付けられたもので、相手から依存されることで自分の価値を見出そうとする状態をいう。在宅勤務や外出の手控えで引き籠りがちになると、モノに対する依存度が高まることが懸念されている。同時に、職場の同僚や知人たちと会う機会が減り、関係性が薄くなると、無意識のうちに成立していた共依存関係が崩れ、その結果として何かしらのトラブルが増加する可能性も指摘されている。

酒も人間関係も大事なのは程度の問題で、何事も「いいあんばい」で付き合えれば良いのである。ちなみに、あんばいは漢字にすると「塩梅」「按排」。元々はその名の通り、調味料である塩と梅酢を意味する語であり、その味加減が良いものを「塩梅(えんばい)が良い」」というようになり、転じて広く程よい加減を指すようになった。

 朝晩の涼しさを感じる季節になってきた。気温と感染力の因果関係はよく分からないが、「経済」「自粛」の両極端に振れるのではなく、どちも「いいあんばい」を意識してこの危機を乗り越えていきたいものだ。

レーダーより