丸セパ 即納 共栄製作所株式会社のホーム > 共栄ニュース > 共栄ニュース 2021年3月号 -第366号-

近ごろ、都に流行るもの

 「近ごろ、都に流行(はや)るもの。空気清浄機、加湿器、トースター」。日本電機工業会によると、昨年の白物家電の国内出荷額が24年ぶりの高水準となったようだ。空気清浄機は前年比57%増、加湿器は25%増となっている。また巣ごもりで在宅時間も増え、トースター、自動調理鍋、ホットプレートなど“家食”に関連するものも伸びている。一方で、出勤回数が減り、電気シェーバーやアイロンなどは減少した。新型コロナウイルス感染の防止と在宅勤務の増加が今のトレンドを象徴している。

 とはいえ、白物家電の出荷増は昨年だけでなく、5年連続の前年比プラスであり、着実に販売実績を伸ばしていて、コロナ禍の一時的な需要増だけではないようだ。

 東芝が中国の美的集団に白物家電事業を売却したのは2016年6月。同年8月には台湾の鴻海精密工業がシャープを子会社化した。当時、外資を巻き込んだ白物家電業界の競争激化の再編劇は、驚きとともに「日本は大丈夫か」と懸念を生んでいた。そうした世間の喧騒を横目に、商品企画が消費者ニーズに合致したからこそ、5年連続のプラス成長を遂げたのであろう。コスト、機能、品質、技術、新しい生活提案力。親会社がどこであれ、そこで働く現場の人たちが積み重ねてきた努力の結果と評価したい。

 春闘がスタートした。事業維持と雇用継続が重要だとし、一律の賃金引上げを拒む経団連。これに対して連合は2%程度のベースアップを方針に掲げる。経済の先行きが不透明な中での雇用の維持と、賃金引上げ交渉だが、従来の年功序列ではなく、役割や成果で処遇を決める人事制度にも見直しが広がっていきそうだ。業績悪化は個々の企業の力だけでなく、業界全体が厳しい環境に追い込まれているという側面もあり、国が改革を推進するデジタル業界は人手不足が深刻になる一方で、苦境の飲食業は廃業・倒産にブレーキがかからない。追い風、向かい風。新型コロナウイルスの感染拡大は、様々な業界で、そこに働く人々の暮らしに影響を与えている。

 この事態に逆転ホームランの一手はないかもしれないが、白物家電のように、地道にヒットをつなげていくしかない。逆風にこうべを垂れつつも、アンテナを高くして変化の予兆を探る。その変化に合わせた商品作り、販売施策など一つ一つに改良を加え、少しでも消費者マインドに沿った事業を展開していくしかない。そうした施策の延長線上に新しい業界の姿が待ち受けていると信じて―――。

【レーダーより】