丸セパ 即納 共栄製作所株式会社のホーム > 共栄ニュース > 共栄ニュース 2021年11月号 -第374号-

俺の後ろに立つな

 “裏側”では知らない者のいない、寡黙な超A級スナイパーの活躍を描いた『ゴルゴ13』の劇画家さいとう・たかをさん(本名・齊藤隆夫)が亡くなった。

『ゴルゴ13』は、1968年発売の「ビックコミック」(小学館)新年号から

連載を開始し、今年で53年目を迎える。現在も連載中で、ストーリーは600話超、シリーズの累積発行部数は3億を超えるというからすごい。今年7月に発売した第201巻は「最も発行巻数が多い単一漫画シリーズ」のカテゴリーで、ギネス世界記録に認定された。

 それにしても『ゴルゴ13』は稀有な劇画作品だ。圧倒的な存在感を放つデューク・東郷は偽名で、本名、国籍、年齢、経歴いずれも不明。余計なことは一切喋らず、速やかに世界の要人などの暗殺を遂行するのだが、イデオロギーや構造的に敵対するどちらの側からの仕事も引き受けるというのは珍しい。

 実は、アクションシーンはそんなに多くはない。読み進めるうちに、国際情勢、政治、経済、宗教、歴史、文化などの知識が次第に身につく大人の教科書的な要素が詰まっている。その時代や状況によって変わる国や組織、個人の正義や悪にはうそがあることをあぶり出す。偽善者の愚かさを描くタッチは作者の哲学なのだろう。

 記念の201巻『最終通貨の攻防』では、通貨がテーマになっている。全く新しい金融システムが完成すると、膨大な利益が消えることを恐れたイギリスの金融一族が通貨の考案者を探し抹殺する。一方、財政危機回避のウルトラCとして新通貨を導入したいアメリカ「オマハ大統領」。敵対する共和党からの依頼を受け偶然同じ現場に出くわすゴルゴ…。思いもよらない発想、展開、結末どれをとっても舌を巻くばかりだ。そしてこれまでの作品中にあるゴルゴのしゃれた台詞も見逃せない。「俺の後ろに音もたてずに立つようなまねをするな」というのは知られているが、ほかにも―――

 「人を殺すときにはつまらんおしゃべりをしているひまに引き金を引くことだ」「俺は…この目で見た事しか、信用した事がない」「俺は、それがどんな権力だろうと、特定の相手を顧客に持つ気はない…二度と俺に近づくな」「その正義とやらは おまえだけの正義ではないのか」 

 さいとうさんの遺志のもとで『ゴルゴ13』の連載は、スタッフと編集部が協力して今後も継続する予定だという。ゴルゴファンとしてはGOOD NEWSだ。

 レーダーより