立 春
二十四節気における“立春”が過ぎ、暦の上では春がはじまった。とはいえ、まだ寒さは厳しく厚手のコートが手放せない日々だ。
“冬来たりなば春遠からじ”という言葉がある。てっきり原典は中国の故事なのだろうと思っていたら、英国の詩人シェリーの長文詩『西風に寄せる歌』の一節だという。
つらい時期を耐え抜けば、幸せな時期は必ず来るというたとえで、いまはコロナ禍を冬になぞらえて語られることも多い。
シェリーが生まれた英国は曇りの日が多く、冬は日照時間が短くなる。日光を浴びる時間が少ないとビタミンD不足となり、この影響もあって「冬季型うつ」になる人が多くなるなど、心身の不調を訴える人が増える。ビタミンDには骨を丈夫にする働きがあり、不足すると骨粗しょう症になるリスクが高まるという。また免疫機能を調整する働きもあり、摂取することで風邪やインフルエンザなどの感染症に抵抗する力もつけることができるそうだ。
日本に住んでいると、紫外線はシミやしわを作るお肌の大敵というイメージが強く、日傘や長袖でなんとか日差しを防ぐことばかりを考えていたが、日光を浴びることは私たちの身体に必要だった。欧米の人たちが少しの間でも日の光を求めて日光浴していたのは、ただ日焼けすることがカッコいいというだけではなかったのだ。
ところで、日本に住んでいるとはいえ、ビタミンD不足の心配がまったくないとはいえない。日本海側の日照時間が少ない地域はいうに及ばず、コロナ禍で家に籠る生活が続き外出をあまりしないという人も多いだろうし、車通勤で滅多に外を歩かない人も、知らないうちにビタミンD不足になってしまっている可能性がある。たとえ日光を浴びても、効果の高い日焼け止めをしっかり塗っていては、浴びたことにならないから要注意だ。
長引くコロナ禍でうつ病の人が増えていると聞く。外出制限や先行きの不安は、多くの人の心の健康に大きな影響をおよぼしている。経済的な問題など簡単に解決できない事柄も多いが、お天気の良い日は、外へ出て散歩をしてみよう。もちろん日焼けには気を付ける必要があるが、適度に日光を浴びることは身体にも良いし、日なたを歩けば前向きな気持ちになれるだろう。春はすぐそこまで来ている。
レーダーより