福井の蕎麦
曹洞宗の大本山として700年以上の歴史と伝統を受け継ぐ禅の道場「永平寺」、国の天然記念物でありながら、2時間ドラマのクライマックスでおなじみの名勝「東尋坊」、「関西の奥座敷」と呼ばれ、昔から多くの文人墨客に愛されてきた「あわら温泉」、今では子供たちに大人気の「恐竜博物館」。これらは、福井と言えば真っ先に出てくる観光名所です。では、食事と言えば…。そう、なんと言っても「越前ガニ」。11月の解禁日を迎えると、県内だけでなく関西や中部地方などから蟹目的の観光客が集まり、旅館やホテル、飲食店は大変な賑わいをみせます。では、「越前ガニ」以外で思いつく食べ物はなんでしょう?なかなか即答できる方は少ないと思いますが、ここで「蕎麦」と回答できた方は相当の福井通ではないでしょうか。
長野県の「戸隠そば」や島根県の「出雲そば」、岩手県の「わんこそば」が日本三大そばとして有名ですが、実は、福井はインターネット調査で『「そば」がおいしいと思う都道府県』で全国1位に輝いたことがあるほどのそば処なのです。ただ、福井の蕎麦は、他地域の蕎麦とはちょっと違います。「かけ」や「ざる」などで食べる方が大半だと思いますが、福井では冷たい蕎麦に、たっぷりの大根おろしと鰹節、刻みネギをのせた「おろしそば=越前おろしそば」が一般的なのです!(福井は大雪でも有名ですが、もちろん、冬でも冷たいおろしそばを食べる人が多い…)。
福井の蕎麦の歴史は古く、その起源は1470年頃にまでさかのぼるとされます。「一乗谷朝倉氏遺跡」でも有名な戦国大名の越前朝倉氏が戦や災害に備える非常食として、栄養が豊富で収穫の早いソバの栽培を奨励したのが始まりだと伝えられています。
当時は「そばがき」などにして食べられていたようですが、健康面を考慮し、江戸時代に入って現在のように大根おろしと一緒に食べるスタイルが普及、以来、冷たい蕎麦と大根おろし、削り節で食べる「越前おろしそば」は400年以上の歴史を数えています。
そして、福井県は全国でも有数のソバの生産地であり、しかもソバの「在来種王国」としても有名なのだそうです。栽培が難しく収穫量も不安定とされますが、小粒で身がつまったソバの実からは、香り高く、コシの強い麺が生まれます。地元でとれた新鮮なソバ粉が、おいしい「福井の蕎麦」を生み出しているのです。
福井は雪や雨が多く、昼夜の寒暖差も大きいなど、自然環境の厳しさで知られています。しかし、人びとの生活を大きく制約してきた雪や雨が豊かな自然を生み出し、清純な水の恵をもたらしてくれます。この豊富で清らかな雪解け水が「福井の蕎麦」に欠かせないソバの実や越前辛味大根を育てる重要な要素となっているのです。
北陸新幹線の敦賀延伸まであと1年。福井県では一丸となって、県の様々な魅力を発信するほか、積極的にPR活動も展開しています。なんとその一環で、あの有名チョコレート会社ゴディバジャパンとのコラボレーション「ふくいそば×GODIVAマリアージュキャンペーン」もあるほどです。
この機会にぜひ、知る人ぞ知る名産品「福井の蕎麦」を食べに来て下さい。おいしいお酒と蕎麦、そして温泉に浸かっていると、ビジネスのヒントが意外と自分の側に転がっていることに気づくかもしれません。
(TEIKOKU NEWS/福井支店長 篠原勝志 氏)