丸セパ 即納 共栄製作所株式会社のホーム > 共栄ニュース > 共栄ニュース 2024年2月号 -第400号-

昇 竜

 京都市左京区にある世界遺産「賀茂御祖神社」(下鴨神社)には干支の守り神を祀る言社があり、毎年、干支の大絵馬が飾られる。今年は辰(竜)。十二支のなかでもとりわけ竜に神秘性を抱くのは、竜が十二支で唯一想像上の動物であるゆえだろう。本来の十二支は、年月の順序や方角を示すもので、辰の字は「竜」とは関係がない。十二支の名前を覚えやすくするために、実在の動物の名に結びつけられたが、辰だけには空想的獣「竜」を当てざるを得なかったと伝わる。    

竜は古代中国の神話上、四神(青竜、朱雀、白虎、玄武)の一つで神獣とされた。水中に棲むとされ、啼き声で嵐や雷雲を呼び、時に昇天して飛翔する。竜巻の語源は、見た目がまるで竜が天空に昇る姿のように見えるからだ。竜の姿は「竜に九似あり」といわれるように、身体は蛇、鱗はコイ、爪は鷹、掌は虎とその神体は動物にたとえられる。触れてはならないものに触れ、相手を怒らせてしまうことを「逆鱗にふれる」と言うが、竜は長い髭をたくわえ、あごの下に一枚だけ逆さに生えた鱗、逆鱗がある。竜はこの逆鱗に触れられるのが大嫌いで、触れられると激高し、触れたものを即座に殺すとされる。           

将棋の「飛車」が成ると「竜」、「角」が成ると「馬」、合わせて「竜馬」。騒然とした幕末に颯爽と登場した坂本竜馬は、世を立て直すために馬のように天下を駆け回り、宿願の大政奉還が遂げられるとともに竜のように天へと駆け上った。竜馬は次のような言葉を残している。「おれは落胆するよりも次の策を考える方の人間だ」。        

新年から能登半島地震、羽田空港衝突事故と大きな悲劇が生じた。4日の東京証券取引所の大発会、日経平均株価は地震の影響を見極めたいという動きから一時700円以上、値を下げた。まさしく不安と波乱の幕開けとなった。それでも、我が国の現状や企業を取り巻く厳しい商環境をいくら悲観したところで、何も解決しない。今こそ、竜馬の言葉を反芻するときだ。ただ前を見て、ひたすら前を見て、次の策を練ってこそ道は拓ける。 

混迷を切り拓く竜馬のような人物は現われなくとも、竜の年にあやかり、一人一人の駒が「飛車」から「竜」に成ると思いたい。道は縦や横だけではない、正攻法で考えて行き詰ったならば斜めがある。縦横無尽に駒を進める将棋の「竜」のように、柔軟に歩を進め、昇竜の一年としたい。

〈レーダーより〉