丸セパ 即納 共栄製作所株式会社のホーム > 共栄ニュース > 共栄ニュース 2024年8月号 -第406号-

ビーバー

 近所の酒屋に「ビーバー」が売っていた。懐かしさの余り、ビールのつまみに購入した。ビーバーは、北陸地方では有名な揚げあられだ。動物のビーバーとあられとはなかなか結び付かないが、パッケージにビーバーのイラストが描かれている。北陸で知名度が圧倒的に高いのはテレビコマーシャルの影響が大きい。ビーバーが怪獣を倒すような内容だったのを今も覚えており、子どもに商品名を売る戦略が当たった。一口サイズのあられはサクサクと軽い食感で食べられ、ほんのり塩味がきいていて美味しい。

 ビーバーを製造していた福屋製菓(石川県白山市)は2013年に倒産している。福屋製菓はバブル期以降、大手メーカー製品との競合や消費者嗜好の多様化に伴い、徐々に売上が減少。苦戦を強いられ、最盛期4億円の売上が、6千万円にまで落ち込んだ。最後の一年は主力商品ビーバーの製造に絞り、事業再生を試み、販路の拡大による回復を見込んだが、これまでの借入金が重荷になり、自己破産に至った。

 そして倒産とともにビーバーは店頭から姿を消した。当時、SNS上では一部のファンの間で「ビーバーが食べられなくなった」と話題になったものだ。

 福屋製菓の倒産から一年後、ビーバーは再び店頭に並ぶことになる。あられメーカー北陸製菓(石川県金沢市)が福屋製菓の従業員を雇用して事業を継承し、ビーバーを復活させたのだ。消費者からの復活を望む声が後押ししたという。

 2019年ビーバーは再び店頭から姿を消した。今度は倒産が原因ではない。その真逆で、注文殺到により生産体制を整えるために販売中止に至ったのだ。火付け役は北米バスケットボールリーグNBAで活躍する八村塁選手。八村選手が新チームに移籍した際、ビーバーをチームメイトにお裾分けした。それを同僚の人気選手が商品とともに「ルイはチームにきて2週間で俺たちを夢中にした」とインスタグラムに投稿したのが大きな反響を呼んだ。八村選手は富山県出身で、ビーバーを子供のころから食べていた。

 その後もビーバーはブームに終わらなかった。北陸製菓はビーバーを看板商品に据え、新味を投入した。八村効果で全国に知れ渡り、今も販路を拡大しているという。

 久しぶりにビーバーを食べたが、味は当時のままに思えた。いくら美味しくても、売れる、売れないは時の運もあろう。それでも長く継続してきたからこそ、ファンがいて、運を引き寄せたのも間違いない。

  <レーダーより>