丸セパ 即納 共栄製作所株式会社のホーム > 共栄ニュース > 共栄ニュース 2025年1月号 -第411号-

文化的アイコン

 「寝室の壁に大谷翔平選手のポスターを貼っています。これを見るとやはり元気をもらえます。」先日、新聞の読者投稿欄にこんな一文があった。投稿者は87歳の女性である。そして「世界中の人々に勇気と感動、幸せを与えており、本当にすごいと思う」とも記している。          

最近、周囲に大谷選手のファンという高齢女性が増えている。中には野球のルールすら解らず、これまでメジャーリーグはおろか日本のプロ野球もほとんど見たことがない人まで、彼が出場するMLBの野球中継に魅入っていた。ワールドシリーズでは日本で1試合平均1210万人がテレビを視聴したという。

 野球のオフシーズンであるこの時期もテレビ局は今年の活躍の特集を組み、連日のように放送している。街ではパートナーシップ契約を結ぶ企業広告の映像がひっきりなしに流れ、大きな広告写真も目にする。大谷選手は野球選手であるとともに「文化的アイコンである」という人までいる。文化的アイコンとは、富士山が日本の文化の象徴であるように、その文化を代表する人物や人工物を指す。

 そして大谷選手のCMが流れた翌日には百貨店で通常の3倍以上の売上があり、オンラインでは20倍を販売した商品もあったという。企業が彼をCMに起用する理由として「強さ」「優しさ」を兼ね備えたイメージと、「夢」「挑戦」「未来」といったテーマが共通しているといわれる。

 なぜ人々は大谷選手が広告に出ているだけで商品を買うのか。あるマーケティングの専門家は「単純に話題性のある広告で、商品を初めて知ってもらえたという効果もあるだろう。しかし、それ以上に重要なのは、今の時代、商品の機能だけで差別化を図るのは難しい。商品が持つブランドイメージや物語性が消費者心理に大きな影響を与える」と言っている。

 大谷選手が広告に登場したからといって、製品の中身が変わらないことは誰もが知っている。それでも買うのはアイコンに付随するイメージ、メッセージ性に魅せられているからにほかならない。今や大谷選手はトップアスリートだけにとどまらない。文化的アイコンとして、日本人の生活や消費行動にまで、大小さまざまな影響を及ぼす存在になっていると言える。

                        <レーダーより>