昭和100年
2025年は昭和の年号で数えると100年に当たる。俳人・中村草田男の「降る雪や明治は遠くなりにけり」という句は、明治が終わり約20年後の昭和6年(1931年)に明治を偲んで詠まれたもの。例えるなら、平成20年(2008年)頃に「昭和は遠くなりにけり」としみじみするのと同じ感覚だ。
各元号100年の日本の様子を順にみていくと、日本が開国・近代化へと歩み始めた明治維新から100年後の明治100年(1968年)の日本は高度経済成長期の真っ只中で、1964年の東京オリンピックが成功し、国際的な地位を確立していた。新幹線や高速道路網の整備が進み、工業化が加速した時代だった。世界に冠たる経済大国になるのに100年がかかった。続いて、大正デモクラシーで文化の花が咲き、民主主義的、自由主義的な風潮が生まれた大正時代から100年後の大正100年(2012年)。日本はバブル崩壊後の長引く経済不況に喘いでおり、民主党政権の混乱のなか、前年の東日本大震災とそれに伴う福島原発事故の絶望的状況が日本全土を覆っていた。
そして日本の戦争経験、戦後復興、高度経済成長を含む激動の昭和時代から100年後の昭和100年(2025年)。日本の国力低下、政治不信が顕著となるなか、少子高齢化、貧困社会、物価上昇、異常気象などの難問に直面している。昭和61年(1986年)の世界時価総額ランキングでは上位50社のうち32社が日本企業だったが、今ではトヨタ自動車がランクインするのみとなった。
それでは来るべき平成100年(2088年)、そして令和100年(2118年)はどんな時代になっているだろうか。人工知能、ロボット技術、バイオテクノロジーなど、様々な分野で技術が飛躍的に進歩し、社会や生活は今と大きく変わっているだろう。グローバル化の深化で国境を越えた人々の移動や情報交換がさらに活発になり、メタバースのような仮想空間が現実世界と密接に結びつき、コミュニケーションのあり方が大きく変化しているかもしれない。その一方で、貧富の格差、資源の枯渇や気候変動など地球環境問題はさらに深刻化し、新たなエネルギー源や生活様式を模索しているだろう。
未来を正確に予測することは不可能だが、より良い未来を築くための重要な一歩でもある。どのような未来でも、一人ひとりが積極的に未来を創っていくことが大切だ。
次の100年もよい100年でありますように。
<レーダーより>